【ランチタイムセミナー】高齢者市場の課題発見とエビデンス創出
2.21(土)12:00~13:00
【演者】
中島 章博
帝人ファーマ株式会社 開発統括部 データサイエンスグループ
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中島 章博
- タイトル:
- 高齢者を含む保険者基盤の医療情報データベースを用いた治療実態の調査
- 要旨:
- 近年、価値に基づいた医療選択の重要性が高まっています。これに伴い、製薬企業では創薬、育薬の各段階において、医療の価値に関するエビデンスを構築するため、医療情報データベースの活用が進んでいます。活用目的は多岐にわたりますが、なかでも治療実態の把握はアンメットメディカルニーズの特定や適正使用の推進等に寄与し、価値に基づく創薬、育薬を行う上で重要な役割を果たしています。
本発表では、慢性疾患で高齢者の割合が高い疾患を対象に、高齢者を含む保険者基盤の医療情報データベースを用いて治療実態を調査した事例を紹介します。今後のさらなる活用に向けて、データベースの適合性や限界、解析時の留意点等について意見交換できれば幸いです。
- 略歴:
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- 2007年東京理科大学大学院 工学研究科 修士課程修了
- 2007年帝人ファーマ株式会社 入社
現在に至る。
医薬品の臨床開発における統計解析業務と共に、医療情報データベースを用いた薬剤疫学研究や費用対効果評価の統計解析業務などに従事。日本製薬工業協会データサイエンス部会の費用対効果評価に関するタスクフォース活動、日本薬剤疫学会 健康・医療情報データベース活用委員会に参加。
佐藤 倫広
東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室、東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門、東北医科薬科大学病院薬剤部
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佐藤 倫広
- タイトル:
- 心血管危険因子に対する薬剤治療の疫学的評価
~大規模リアルワールドデータが示す治療と予防の重要性~
- 要旨:
- 近年、日本における脳心血管疾患の予防と管理において、リアルワールドデータの活用が急速に進展している。発表者はこれまでDeSCヘルスケア株式会社が提供する保険者データベースを用い、様々な血圧に関するリアルワールドエビデンスを報告している。近年では、高血圧・脂質異常症治療と冠動脈疾患リスクとの関連を報告している。その結果、血圧が良好にコントロールされていても降圧薬を処方されている患者は、同等の血圧レベルを有する降圧未治療者と比較して冠動脈疾患リスクが高いことが様々な感度分析を行ったうえで示された。この知見は、薬物治療を要する病態そのものが伴う残存リスクの存在を示唆しており、一次予防における生活習慣改善の重要性を改めて浮き彫りにしている。一方、脂質異常症治療有無にかかわらずLDLコレステロールは冠動脈疾患リスクと直線的に関連していた。これらは、心血管疾患予防における血圧・脂質の管理と予防の相対的重要性を示している。
脳心血管危険因子の包括的管理という観点から、糖尿病治療薬や高尿酸血症治療薬の多面的効果についても検討を行っている。ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬を処方されている患者では、処方されていない患者と比較して腎予後が良好であることが示された。また、キサンチンオキシダーゼ阻害薬においては、非糖尿病患者における薬剤選択が蛋白尿発症リスクに影響することが明らかとなり、個別化医療の重要性が確認された。リアルワールドデータは、厳格な選択基準を設けた臨床試験では得られない、実臨床における治療効果や安全性に関する情報を提供する点で極めて有用である。医療ビッグデータ時代において、日常診療から生まれる膨大なデータを活用し、高齢者特有の課題を発見し、それに対するエビデンスを創出することこそが、超高齢社会における最適な脳心血管疾患予防戦略の確立につながると考えられる。
- 略歴:
- 2008年東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)総合薬学科卒業後、2013年東北大学大学院薬学研究科にて博士号取得。2016年4月東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室 助教、2023年4月より同講師に就任。専門は疫学、医療薬学、薬剤疫学、医療薬学。上級疫学専門家、認定薬剤疫学家、PMDA専門委員、日本薬剤疫学会評議員
【座長】
目時 弘仁
東北医科薬科大学
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目時 弘仁