【シンポジウム】QOL尺度:プロファイル型か?インデックス型か?

11.3/13:15〜14:45

【企画趣旨】

QOL尺度が臨床研究のアウトカム評価に用いられるようになって久しい。わが国においても、医薬品等の費用対効果評価の導入に伴い、インデックス型尺度から得られた効用値(QOL値)に基づく質調整生存年(QALY, quality-adjusted life years)を活用した医療経済評価のニーズが急速に高まりつつある。一方で、プロファイル型尺度の重要性は広く臨床家にも認識される状況といえ、臨床研究におけるアウトカム評価としてはもはや当たり前のものになりつつあるが、その結果をどのように解釈するかについての理解はなお十分とは言えないのが実情である。本シンポジウムでは、「インデックス型尺度」と、「プロファイル型尺度」を取りあげ、それらの活用ならびに解釈可能性についてのPros & Consを議論する。それぞれに役割が異なる面もあるが、どのような場合にどちらの型の尺度が最大限に力を発揮しうるのかについても議論を深めたい。

【演者】

後藤 励
慶應義塾大学 教授

  • 後藤 励
タイトル:
プロファイル型尺度か? インデックス型尺度か?(インデックス型尺度パート:QOL尺度を医療経済評価研究に用いる)
要旨:
医療経済評価研究では、QOLの各側面の回答から1~0にスコア化されたインデックス型尺度を用いられることが多い。インデックス型尺度で表された健康関連QOLと生存年を組み合わせて産出されたQALYを医療経済評価のアウトカム指標とすることが標準的に行われている。QALYは、個人の主観的満足度を表す概念である「効用」を示すという考え方もある。これは、個人の効用に基づいて決まる社会の望ましさの指標である「社会厚生」に、医療経済評価の結果が何らかの示唆を与えられないかという発想が根底にある。健康の価値をどう捉えるか。健康以外の価値をどう捉えることが出来るのか。本パートでは、インデックス型尺度についての最近の議論も含めて概説する。
略歴:
静岡県富士市出身 1998年京都大学医学部卒。神戸市立中央市民病院内科研修を行う。2000年からは京都大学大学院経済学研究科で医療経済学の研究を行い、博士(経済学)取得。甲南大学経済学部、京都大学白眉センターを経て現職。2019年10月より健康マネジメント研究科を兼担し医療経済評価人材育成プログラム及び費用対効果評価公的分析事業を担当。医療経済学会理事、ISPOR(国際医薬経済・アウトカム研究学会)日本部会次期会長等を務める。専門は、健康経済学、医療政策、行動経済学。
山本 洋介
京都大学 教授

  • 山本 洋介
タイトル:
プロファイル型尺度か?インデックス型尺度か?(プロファイル型尺度パート:QOL尺度を臨床研究に用いる)
要旨:
臨床研究には、randomized controlled trial (RCT) はもちろんのこと、実際の患者や、一般住民集団から real world evidence を得るために必要な観察研究まで、幅広い研究の型が含まれるが、これらの研究全てにおけるアウトカム評価として、QOLが重視されるようになって久しい。そのQOL評価のための尺度として広く用いられてきているのがプロファイル型尺度である。単一の指標である効用値(QOL値とも)と比較して、身体・精神・役割などの多面的な観点からQOLを評価できる長所がある一方、その結果の意味するところについては十分な理解が得られているとはいいがたい。本パートでは、プロファイル型尺度を用いることの利点からその最前線までを俯瞰した上で、プロファイル型尺度を用いた研究デザインならびに結果の解釈を考える上で注意するべき点について述べる。
略歴:
兵庫県神戸市出身、2002年京都大学医学部卒。洛和会音羽病院総合内科研修を経て、京大病院皮膚科・公立豊岡病院皮膚科ほかで勤務。その後、京都大学大学院医学研究科医療疫学分野に進学、臨床研究・QoL研究を開始。2010年同特定講師、2013年英国シェフィールド大学Visitor Academic等を経て、2021年より現職。これまで一貫して、尺度開発・臨床応用の両面からQoL研究に従事。現在も臨床を行いつつ、QoLにとどまらずPatient Reported Outcomes (PRO)を用いた臨床研究、データベース研究など様々な臨床疫学研究・ならびにその教育に携わる。博士(医学)、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、社会医学系指導医、日本疫学会上級疫学専門家、日本臨床疫学会上席専門家。

【座長】

白岩 健
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター上席主任研究官
略歴:
東京大学大学院薬学系研究科修了(博士(薬学))後、2010年立命館大学 総合理工学院・生命科学部生命医科学科 助教、2012年帝京大学 医学部 衛生学公衆衛生学講座 講師などを経て、2012年より国立保健医療科学院勤務。2018年より現職。 国立保健医療科学院専門課程生物統計分野終了(MPH in biostatistics)。
専門分野は、医療経済評価、医療技術評価、QOL研究など。
福原 俊一
京都大学 特任教授、福島県立医科大学 副学長、Johns Hopkins大学 客員教授、慶応義塾大学 客員教授

  • 福原 俊一
略歴:
北海道大学医学部卒、横須賀米海軍病院インターン、カリフォルニア大学 サンフランシスコ校(UCSF)で内科学レジデント、米国内科学会専門医取得後、循環器・総合内科臨床に従事. その後Harvard大学医学部・SPH合同の臨床疫学特別プログラムを修了(MSc). 国際QOL project (IQOLA)に日本代表として参画。国際QOL学会理事、学会誌編集委員などを歴任。書籍「QOL評価学」(中山書店). Nature Clinical Practice (2008)や学士會会報(2024)にQOLに関する総説を発表。

【共催者からのメッセージ】

森下 亜由美
IQVIAソリューションズジャパン合同会社
Real World Evidence Solutions and HEOR シニアコンサルタント
略歴:
レジャイナ大学経済学部卒業。
大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座環境医学 公衆衛生修士課程修了。
外資系製薬会社の安全性情報部勤務を経て、2019年にIQVIAソリューションズジャパン株式会社に入社。主にPROを用いた研究、疾患や治療に関するデルファイ・パネル、クリニカルパスの評価研究などに携わり医療従事者や医療関連企業のエビデンス創出を支援する。