【シンポジウム】データベースか?コホートか?

11.2/9:00〜10:30

【企画趣旨】

住民ベースの前向きコホートは疫学研究の根幹を成すものである。疾病の罹患率や有病割合などの疫学的情報の把握、種々の曝露要因と疾病罹患の因果関係の解明など、その果たすべき役割の重要性は古今東西変わらない。一方、近年大規模なリアルワールドデータベースが整備され、それらを用いた臨床疫学研究が隆盛している。
本シンポジウムでは、コホート研究とデータベース研究、それぞれの第一人者を招聘し、各研究手法の守備範囲、利点と限界、今後の発展可能性について、双方の比較の上で論じていただく。

【演者】

康永 秀生
東京大学 教授

  • 康永 秀生
タイトル:
リアルワールドデータを用いた臨床研究
要旨:
リアルワールドデータを用いた臨床研究が長足の進歩を遂げている。全国規模の保険データベース(健診・レセプトデータ、DPCデータ、介護レセプトデータ)、患者レジストリー(外科学会NCDなど)、電子カルテ情報などの研究利用の可能性が高まり、それらを用いた研究の方法論も確立されつつある。リアルワールドデータは、未測定交絡、データの妥当性、欠損値など多くの課題を抱えており、それらへの対処法も改善され続けている。本講演では、リアルワールドデータ研究の可能性と限界、他の研究デザインとの相互補完性などについて解説する。
略歴:
平成6年、東京大学医学部医学科卒。卒後6年間、東京大学医学部附属病院、竹田綜合病院、旭中央病院で外科臨床に従事。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学(博士課程)、同研究科医療経営政策学特任助教・特任准教授を経て、平成25年より同研究科臨床疫学・経済学教授。日本臨床疫学会理事。Annals of Clinical Epidemiology編集長。
二宮 利治
九州大学 教授

  • 二宮 利治
タイトル:
コホート研究の実際と可能性
要旨:
コホート研究は、対象集団の個別の生活情報や医療情報を包括的に収集し、分野を限定せず様々な保健衛生学的および社会的な問題への対策を確立する上で有益な研究手法である。さらに、多階層に及ぶ生命分子データの網羅的解析技術の飛躍的進歩により、従来のコホート研究によって構築された経時的な疾患情報に加えて、核酸・タンパク質・脂質・糖鎖などの多階層に及ぶ網羅的な生命分子データを追加することにより、様々な分野で広く応用されていくことが期待される。本講演では、コホート研究の実際、可能性と限界などについて解説する。
略歴:
平成5年、九州大学医学部卒業。卒後、腎臓内科医として従事。平成12年、九州大学医学博士取得、平成15年、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学・学術研究員(久山町研究)、平成18年、 シドニー大学ジョージ国際保健研究所へ留学、平成23年以降、九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科・助教、九州大学大学院医学研究院 附属総合コホートセンター・教授を経て、平成28年、九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野・教授。

【座長】

中山 健夫
京都大学 教授
略歴:
1987年 東京医科歯科大学医学部卒、東京厚生年金病院内科、同大難治疾患研究所疫学部門、米国UCLAフェロー、国立がんセンター研究所室長を経て、2000年京都大学大学院医学研究科助教授、2006年から現職、22016-19年 同専攻長・医学研究科副研究科長、2023年 附属病院倫理支援部部長(併任)
厚生労働省厚生科学審議会委員、同第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会座長、予防・健康づくりに関するエビデンス構築事業審査・評価委員会委員長、同e-ヘルスネット情報評価委委員会座長、日本医療研究開発機構ヘルスケア社会実装基盤整備事業プログラムスーパーバイザー/認知症事業プログラムオフィサー、日本医療機能評価機構EBM医療情報事業Minds運営委員長、社会医学系専門医・指導医、日本疫学会 功労賞(2021年)

【共催者からのメッセージ】

幡鎌 暁子
株式会社ディー・エヌ・エー グループエグゼクティブ
株式会社データホライゾン 常務執行役員 新規事業開発本部 本部長
DeSCヘルスケア株式会社 インダストリー統括部 統括部長
略歴:
  • 2010年
    東京理科大学大学院理学研究科化学専攻 修了
  • 2010年
    第一三共株式会社 入社(MR職)
  • 2012年
    日本イーライリリー株式会社入社(MR職)
  • 2015年
    株式会社日本医療情報センター入社(製薬向けコンサルティング営業職)
  • 2019年
    株式会社ディー・エヌ・エー入社
    株式会社データホライゾン、DeSCヘルスケア株式会社へ出向
  • 現在に至る
  • 2019年からデータ利活用事業の立ち上げを行い、2020年下期にサービスローンチした。2024年度からデータ利活用事業、疾病啓発事業、DX事業等インダストリー向けのマネジメント業務を行う。データヘルス事業を含むデータ利活用を通したエビデンスの創出と生活者還元に係る事業運営を推進している。